「宗教と政治検討委員会」設立の趣旨
昭和63年8月10日(会報46‐3)
京都仏教会
古都税紛争の終結は、仏教会の掲げた目標を一応達成することができた。しかしその反面、戦後の宗教界、とりわけ仏教・僧侶集団の欠点、弱点を大きく世間に露呈することとなった。
第一に、国家・社会に対し宗教の位置を見失うことで、現行憲法下における信教の自由・政教分離といった基本的な認識・自覚を著しく欠くに至っている。第二に、布教活動が惰性となり、習俗化して時代の要求に応えられなくなっている。この二つの指摘は常に表裏一体の現象であり、このことが僧侶の自立心の欠落を招き、当然の事ながら社会に語りかける能力を失い、社会的に埋没した存在になってしまっている。宗派単位による教団の在り方も、相変わらず三百年の檀家制度の上にあるが、既に制度そのものが崩壊しつつある事に対しても対応の動きはなく「祖霊信仰」のみに頼りきり、組織体としての勢力も疲弊の一途をたどつている。
そこで京都仏教会は、これらの反省に立ち、識者を交え、広く内外の情報を集め、今日まで無関心であった国家・社会と宗教の在り方を追求することによって、内部的には僧侶への啓蒙を、外部的には仏教の精神をもとに広く社会に提言してゆくことが急務であると考える。そしてぶたたび仏教が復権するための活路を見出だし、人々の魂を揺さぶる活力体として健全な社会の構築に向けてその指針となるべく専門委員会を設立するものである。