平成8年8月15日 刊行本 宗教法人法「改正」と税制 -宗教法人の自主性を確立するために- より
はじめに
昨年秋の臨時国会において、宗教法人法の一部改正法案が成立しました。
実のところ国民はおろか当の宗教法人関係者もよく内容を存知しないまま、極めて政治的に法案が成立致しました。
オウム真理教の一連の犯罪行為をきっかけに、世間が宗教への不信感を募らせていることを背景に、政府与党は敵対する野党勢力の支持固体である創価学会の政治活動を封じ込めるという目的をもって宗教法人法の改正を行ったこの事実を、我々宗教者は重く見なければなりません。
信教の自由という人間の内面の自由に係わる事柄が、不安定な政治の力学によって左右されるべきものではないし、ましてや宗教を管理監督する方向性に道を開くことだけは断じて許してはいけないと思います。
また今回の問題を通して宗教界は、国家と宗教について、あるいは政治と宗教の在り方についての問題認識が甘かったことは否めませんし、加えて宗教間の情報交換及び連帯性の欠如は政府与党をしてたやすく法案の成立に向わさしめました。
我々はこのことを謙虚に反省し、今こそ法人という共通項をもって、好悪の情を越えて宗教界は連帯を深めなければなりません。
我々宗教者が問題意識を持ち正面から取り組まないと、国民の宗教への不信感はさらに増幅されてゆきます。
宗教界の連帯と国民に応える体制づくりは、信教の自由、政教分離の確立とともに急務であります。
京都仏教会は「宗教と政治検討委員会」において宗教学、税法学、社会学の学識者の方々それぞれ専門の観点から、今回の宗教法人法「改正」に関連して論じていただきました。
各ご寺院方におかれましては、ぜひご一読いただきたいと存じます。
合掌
平成八年八月
京都仏教会理事長
有馬 頼底