税務署お尋ね文書について
平成12年(会報68‐2)
京都仏教会
本年三月末、全国の宗教法人を対象にした税務に関する「お尋ね」の文書が一斉に発送されました。『宗教法人の給与の支給状況及び収益事業等についてのお尋ね』と題されたこの文書への対応について、当会に対し、各ご寺院からのお問い合わせが多く、したがって左記の如く留意点を列記致しましたので、今後のご参考にして下さい。
この文書は、あくまで「お尋ね」であり、何等法的拘束力を持つものではなく、提出しなければならないというものではありません。仮に協力する場合には、
一、 年間収入が八千万円以下で収益事業を行っていない宗教法人は、1、給与の支給の有無、支給状況の内訳と2の(1)申告の状況、についてだけを記入すればよい。2、代表役員の状況 (2)扶養親族の状況(3)代表役員の変更の有無。3、収益事業の状況。4、保存帳簿の状況。5、収支決算書。6、財産目録については記入の必要はありません。
一、 年間収入に関係なく収益事業を行っている宗教法人は、1、2の(1)、3、5、だけを記入し、2の(2)(3)、4、6については記入の必要はありません。
一、 年間収入が八千万円以上で収益事業を行っていない宗教法人の場合、1、2の(1)、5、だけを記入し、2の(2)(3)、3、4、6については記入の必要はありません。
なお、都道府県によっては、各包括の教団本部や支部、また宗派や仏教会から所属する末端の宗教法人に対し、「調査徹底を約束したので、協力するように」との通知が出されている県もあります。しかし法人の管理運営、税務対策等については、本来個々の宗教法人が適正に対応することであり、この「お尋ね」文書は、本質的には税務署が各宗教法人を個々に訪問し、内容を把握する趣旨のものであるのを、文書による事前調査によってある程度資料として把握する、いわば税務事務の簡略化への法人側の協力という位置づけであると思われます。
ゆえに宗派や仏教会が慎重に内容を検討せず、調査徹底を末端の法人に強制したり、文書通達をすべさ趣旨ではないことは明らかであり、当会もその「お尋ね」文章の内容については問題視しております。例えば財産目録についてなどは、項目の6番目として何の説明もなく当然のように記入欄が設けてありますが、これは本来宗教法人に備え付けるものであって、税務署に対して提出する義務はないものです。また、5の収支決算書についても収益事業の申告の中ですでに提出している法人は、やはり記入の必要はありません。
各ご寺院におかれましては、この「お尋ね」文書が到着から示された提出期限までが短かく、かつ情報不足の中、教区や地区の仏教会から協力を促す依頼文書が回覧されてくる状況で提出された法人もあると存じますが、これは法定外文書であり、必ずしも提出しなければならないという趣旨のものではないことを重ねて申し上げ、今後のご対応の参考になれば幸甚に存じます。