布施の原点に還る
前 文
令和元年に京都仏教会より発表いたしました声明文「布施の原点に還る」につきまして、当会は今日までの、物による布施から貨幣による布施へと形態が変化してきた歴史を踏まえた上で、この声明から5年を経た中で現在、キャッシュレス化という時代の流れには抗えない部分もあることと認識しております。
しかしながら、キャッシュレス化を受け入れていく中で、拝観行為は宗教行為であり、特に①「信教の自由」を損ねる恐れがあるということ、②拝観料は非課税であるという根本があり、そこに手数料が発生しても、その手数料ゆえに宗教活動への課税は正当化できないこと、この二点につきましては重要な点であると捉えております。
いずれにせよ「布施の原点」の本質、あるいは布施に対する姿勢はこれまでとは何ら変わりないということで理解しております。
また令和元年に声明文を発表するに至った背景のひとつに、キャッシュレスそのものの実態が判然としてない状態にあったため、不必要な課税を招く恐れも十分にありうると考えられたことから、京都仏教会としては、各寺院に安易に導入が広がってしまうことを懸念し、まずは慎重に考えていただくよう早急に訴えかける必要がございました。
そして今回の改定に至る経緯としては、声明文発表から約5年経過した現在の動向をみて、必要以上に強調していたと言える箇所において、より今の時世に見合った適切な表現へと変更させていただいた次第でございます。
以上により、京都仏教会におけるここ数年の研究、社会情勢の変化に基づいて、次ページのように改定するものです。また京都仏教会の理事、評議員の間でこの認識を共有いたしたく存じます。
合掌
声 明 文
- 「聖俗の分離」に従う寺院の宗教活動は世俗の事業とは本質的に異なる。
- 布施は財物に託して、信者の心、魂を仏様に奉げるものであり、対価取引の営業行為とは根本的に異なる。
- 本来、対面的であることを重視する宗教行為の本旨を重んじ、キャッシュレスによる布施についても、そのことが軽視されることのないようにしなければならない。
- 宗教団体・宗教法人において、法要、拝観、葬儀などの宗教行為と収益事業は明確に分離されている。
- 布施は財物に託して、信者の心、魂を仏様に奉げるものであり、対価取引の営業行為とは根本的に異なる。
- 「信教の自由」を守る
- 布施のキャッシュレス化により宗教信者の個人情報および宗教的活動が第三者に把握される危惧がある。
- 信者の活動状況および個人情報を含むビッグデータから信者および寺院の信教の自由が侵されることを危惧する。
- 信者および寺院の行動が外部に知られ宗教統制、宗教弾圧に利用されることを強く危惧する。
- 布施は法人税法上の収益事業ではない。キャッシュレス化の浸透により布施の方法が変わっても、その布施の本質は変わることはない。
- 布施のキャッシュレス化により宗教信者の個人情報および宗教的活動が第三者に把握される危惧がある。
- 「寺院への対応」を求める
- 傘下寺院に対して、寺院の宗教活動におけるキャッシュレス化の受け入れについては信教の自由に配慮し慎重に考慮することを求める。
- 公益財団法人全日本仏教会と連携を密にし、全国の宗派、寺院における対応を求めてゆく。
- 日本宗教連盟、近畿宗教連盟その他全国の宗教連盟にも同様の対応を求めてゆく。
- 傘下寺院に対して、寺院の宗教活動におけるキャッシュレス化の受け入れについては信教の自由に配慮し慎重に考慮することを求める。
令和6年6月25日
一般財団法人 京都仏教会
理事長 有馬 賴底